相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。
また、特定贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。具体的な贈与税および相続税の計算については、下記の「計算方法・計算式」をご覧ください。
このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。
※ 令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に対する贈与税・相続税について、相続時精算課税に係る基礎控除を創設するなどの改正がされました。税制改正の概要については「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年6月)」(PDF/1,023KB)をご覧ください。
適用対象者
贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫とされています。
なお、贈与により「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)」の適用に係る非上場株式等を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限ります。)でも適用できます。
また、贈与により「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除(措法70の6の8)」の適用に係る事業用資産を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者に限ります。)でも適用できます。
適用対象財産等
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
計算方法・計算式
(1)贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年分以後、特定贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円(注)。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、特定贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し、贈与税額を計算します。
(注) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産の価額が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。
(2)相続税額の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、特定贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
申告等の方法
相続時精算課税を選択しようとする受贈者(子または孫など)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出する必要があります。
相続時精算課税は、受贈者(子または孫など)が贈与者(父母または祖父母など)ごとに選択できますが、いったん選択すると選択した年分以後特定贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。